第167話「むふふぺでぃや−天国と地獄の美女−」の巻

 貴兄の目には今、ナニが映っているだろうか。
 想像して頂きたい。マイコンのモニター、あるいはケータイのディスプレイがブラウン管だとして、そこに最初は誰も居ない。やがて背広に身を包んだ中年男が、おバスト・アップで姿を現す。思わず小銭を入れたくなる程のタテぢわを眉間に刻み、キャメラを見すえた彼は開口一番、
 「明けましておめでとうございます、柾木大造です」(と、キャメラにヌカれないのをいー事に、下半身はムキ身で)
 ……今日9/30分の更新をするに際し、「ですます」口調で、ツラ構えはデスマスク調で与太話を垂れ流す通常営業スタイルの方が楽そうではあるが、筆者は今回ウィキペディヤごっこをヤリたがっている。そして哀れそのダシにされてしまうのが、記事タイトルの副題にあるデーヴイデー作品とゆー訳だ。
 筆者が趣味で連載しているブログで、かの作品名をナニがしかの馬鹿記事に差し込んだのが幸いし、それに類したキーワーヅから数え切れない程のアクセスが殺到した。2、3名様。しかし文中で筆者は「『天国と地獄の美女』のロケ地は(自身が生息する)埼玉県熊谷市である」等と、海なし県民の分際でイケしゃあしゃあと嘘っぱちを書き捨てただけだった。あとは妄言、妄言、また妄言に終始していたのである。だが筆者は所有しているのだ、一応、現物を。


 


 先の記事では軽ふざけの悪ハヅミ(当人は『軽ハヅミの悪ふざけ』といーたい模様)で、飽くまで小ネタのひとつとしてしか「天国と〜」に触れなかった為、本来それの情報を求めての検索からいらしたお客様の気を害してしまったろう。その方々への罪ほぼろし(当人は『罪ほろぼし』といーたい模様)の意味で、こいつぁーいづれメイン・テーマとして扱わざぁなるまいて!と心に誓ったのだった。
 現在の住居への引っ越しは離婚を契機にしたてんやわんや&涙目のモノだった為、そのゴタゴタの内に実物こそ何処かへ行ってしまったが、「天国」の原作「パノラマ島奇談」は筆者にとって思い入れの深い1作である。筆者が中学生(※のちに訂正:よく考えたら小6)の時に出会い、もう20年以上の付き合いとなる筋肉少女帯。初めて聴いた彼等のアルバムが「サーカス団、パノラマ島へ帰る」だったのだ。居場所の無い感に煩悶していた暗黒の中学時代にあり、大槻ケンヂから「兄さん、よろしい逃げ場おまっせ」と何故か関西弁でミミ打ちされたかの如き錯覚に陥り、筆者自身も   のちにオーケンがゆー所の“選ばれし、中途半端な者達”の理想郷   パノラマ島の住民となったのである。


天国と地獄の美女 江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」
 天国と地獄の美女 江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」(てんごくとぢごくのびぢょ えどがわらむぽのパノラマとうきだん。きだむがきます)は、1982年1月2日にテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で放送されたTVドラマである。お正月3ヶ日のド真ん中にも関わらず、平気の平左で放映されてしまったのである。


キャスツ編集
 明智小五郎:「てんちも」こと天地茂。
 菰田千代子:♪おばけの救急車ぁ〜!で一世を風靡した叶和貴子
 明智文代:五十嵐めぐみ。なして「ごぢゅうあらし」で「いがらし」って読むんだんべ?
 大野雄三:小池朝雄ああ、夜が明ける
 人見英子:昭和の人間なら誰しもマネたであろう、「づんこで〜す」でおなぢみの宮下順子
 釘谷房枝:水野久美。子どもの頃のアダ名は多分「水くみ」。
 小林少年:柏原貴。かしわばらたかしわばらたかしわばらた……(エンドレス)。
 浪越警部:荒井注、略してアラチュウ!(キンキン声で、かつアクセンツは『ラ』)
 人見広介:MC SHIROこと伊東四朗


スタッフ編集
 原作:「浦安鉄筋家族」の嘘つき爺さんのモデル、江戸川乱歩
 脚本:乱歩ならぬ春歩なジェームス三木
 音楽:鏑木創ライトノベルのキャラみたいなお名前だなや。
 撮影:小杉正雄。最近の若者には「ちょっと味が正雄だな。……あ、『小杉=濃すぎ』って事ね」とゆ−狩野英孝のネタの方が有名か?
 美術:猪俣邦弘。岩谷テンホーにアダ名を付けさせたらヤバイ事になる。
 照明:佐久間丈彦。イ左ス間ヌ彦。
 録音:鈴木正男(すづき・ぢょんなむ)。
 編集:鶴田益一(つるた・ますぅ)。
 監督:てやんでいバーローひろし! 井上梅次
 製作:まつたけぢゃないよ、松竹株式会社/テレビ朝日ああ、夜が明ける(2回目)。


あらすぢ編集
 「パノラマ島」。それは冴えない中年・人見広介が夢に抱く人工の楽園。だが彼に賛同する者は無く、ただ鬱屈する日々が続くだけだった。そんな彼に、恐ろしくも甘美な偶然が訪れる。広介と瓜ふたつの“菰田源三郎”とゆー富豪の出現により、死と恐怖に彩られた可能性が露わになった。源三郎の巨万の富さえあれば、決して叶わぬはづの夢が現実のモノとなる……! 妻の英子、そして新興宗教教祖の大野に焚き付けられ、広介は源三郎とスリ替わる事になったが   やがて地上に誕生する最後の桃源郷。そこで名探偵・明智小五郎が見た、大悲劇の恐るべき結末とは!?(以上、デーヴイデー・パッケーヂ裏面および封入のライナーノーツの作品解説をチャンプル。勝手に)


極私的雑感編集
 注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされていたりいなかったり。なんならネタバレすっぞ。


 本作は通常2時間の土ワイの枠を3時間に拡大させた新春特別企画だった。まづ鏡モチが映し出された画面に、追って「てんちも」こと天地茂が演じる明智小五郎が登場する。そして「明けましておめでとうございます、明智小五郎です」と来たモノだ、アノ顔で。てんちも個人や明智とゆーキャラがどうのでなく、飽くまで「てんちもが演じる明智雅ちゃん語で『明智・キラーソー・てんちも』)」に限った話だが、この男ほどアケオメが似合わない者も居るまい。そんな彼により、物語の概要が語られる。
 「『パノラマ島』……この幻の島を巡って、すざまぢい(てんちも語)事件が次から次へと起こります。不気味なカラス……えぐり取られる目の玉……浴室の殺人……地獄谷……そして天国の園に奏でられる愛の調べ……息も継がせぬ面白さです」
 面白いだか。それをこっちは面白がっていーだか。全視聴者を当惑のヅンドコに叩き落とした挙げ句、てんちもはこう〆るのだ。
 「正月の夜を、ごゆっくりとお楽しみ下さい」
 ゆっくり楽しめるモノか。全く開始早々おトソ気分ぶち壊しである。


 


 とみに昨今の実写化作品は設定の改悪などから「原作レイプ」と揶揄されるが、今冬上映予定の「王様ゲーム」(原作:金沢伸明)に関しては「レイプしてヤレばいー」との声も。一方「天国と地獄の美女」、原作「パノラマ島奇談」では独身の小説家だったはづの主人公・人見広介は、ドラマ版では所帯のある美術工芸デザイナーに改変されている。小説家が楽園を創造するより、ゲーヂツ畑の人間が理想郷を建設する方が話として通るし、チョンガー(死語)が独りで狂気に走るよりも、妻とその愛人に振り回されて犯行に至るとゆーのが、妻の不貞を黙認している事も含め、広介の駄目さ加減を浮き彫りにしている。これはいーレイプだ。いーレイプだ?
 広介の駄目っぷりは次の場面にも表れている。パノラマ島の為の資金グリに奔走するもハナも掛けられず、トボトボと家路につく彼に一羽のカラスがまとわり付いて来るのだ。「畜生! 馬鹿にしやがって!」と被害妄想一直線の広介である。あゝ蟹に突つかれカラスに踏まれ(人間椅子)。とうとう広介の家にまでついて来た野良ガラス(?)は、山林王・菰田源三郎の飼いガラス(!?)だと知る。そして愛ガラス(!!)も見まごう程、飼主と広介は似ているとも知る所となる……広介の妻の愛人である宗教団体の教祖はこの偶然の一致を逃さない。教団の拡大を目論む教祖は、広介を影武者に立てて菰田家の乗っ取りを画策する。つまり、源三郎を亡き者にせんと企てたのだ。


 


 しかし直接的な襲撃は失敗し、源三郎の命は奪えなかった。それどころか、故意ではないにせよ彼の左目を潰してしまい、源三郎と広介との外見に相違が生じる事となる。これでは計画がオヂャン(死滅語)になってしまう、そう考えた教祖は広介の左目をも潰して完コピ。そのシーンには、同様の場面がある「アンダルシアの犬」からの影響が見え隠れしている。これぞアンダルシアに憧れてと云った所だろうか。違う。
 ♪アングラ、サブカルだーいーすーき、ポリスのコスプレだーいーすーき、わたしはっ、わたしはっ、おばけの救急車ぁ〜! はたまた♪ミッネラァ〜ルむっぎっちゃ、みっそラ〜ァメン>州*‘ -‘リ ……筆者自身ナニいーたいんだか訳わからなくなっちゃったんで改めるけど、要するに目つぶしの場面はサーヴィスとも取れる、アングラくてサブカルいの大好きっ子への。貴兄である。本作に類する検索語からお越し下さった貴兄である。それ以外のお客様は交通事故の被害者と云えよう。ごめんなさい。
 それにつけても舌を巻くべきは、やはりキャスチングの妙だろう。MC SHIROこと伊東四朗が演じる広介に瓜ふたつとゆー設定の源三郎を演じた俳優が、事実SHIROに生き写しだったのだ。どんだけソックリかっつーと電気グルーヴピエール瀧と「カッコーの巣の上で」のアイツくらい。双子ぢゃないのに双子みたい。


 


 ある日「ガーナ氏症候群」とゆー奇病によって源三郎は急逝し、土葬される。それをいー事に「広介自身は自殺した、そして源三郎は生き返った」とゆー体(てい)を装い、広介は源三郎となり変わる。そして菰田家が所有する孤島を300億もの財で改造し、ついにパノラマ島は完成を迎えた。大いなる妄想を具象化せしめたのだ。
 源三郎の妻・千代子を連れ立ち、パノラマ島おデートとシャレ込む広介。プロポぢかけのエレヴェーターで海底へ降りると、そこには水族館と動物園とヂャングル・クルーヅと熱川バナナワニ園とを一緒くたにした様な世界が広がっていた。広介がしたかったのってそんな事? あと「一緒くた」の「くた」ってナニ?
 特筆すべきは、広介いわく「エロスの園」、筆者に云わせりゃ「パノラマ島秘宝館」だろう。そこでは白人も黒人ももちろん東洋人も入り乱れ、おヌードの踊り子さんザッと20名ほどがクンヅホグレツなのである。ロンドンロンドン愉快なロンドン。RHYMESTERよろしく、けしからん! からの、玉乱ぜ!とゆーべきか。それにしてもTVでおっぱいを映せるだなんて、いー時代だったなや、ムフフ。……けっ、決して下衆いだけの意見ぢゃないんだかんねっ! 劇中で広介が云ってた「人間の赤裸々な姿を表現したかったのだ」、それを画面上にも表せてたってお話なんだかんねっ!(等といーながら、チャックが上がらない程にヅボンの中はパッツンパッツンなのである)


 


 だが本作は、小学校の図書室などにもナニ喰わぬツラで陳列されていた乱歩作品のドラマ化であるからして、「お父さんお母さん、これ観ようよ」的なノリで視聴していたお茶の間が重た〜く気まづ〜い空気に支配された事は想像にかたくない。ましてお正月の2日からだ。全くおつかれいなーである(最近ハマッてる)。
 閑話休題。前述の通り広介は妻帯者だったが、源三郎に身をやつしてからは、その妻だった千代子にホの字(古墳語)となってしまう。広介にとって千代子は、源三郎としての本妻とゆーよりはカタ思いの相手に近い感覚だったのではなかろうか。付き合ってるのに片思い By Berryz工房。広介は30なかばの中年である。それでも恋は恋に違いない。この辺の童貞心あふれる広介に、性経験の有無を問わず、「根暗」とゆー不治の病を抱えるオスは感情移入させられるだろう。
 「私の才能が自然を征服したのだよ」等とホザき、千代子とのパノラマ島おデートを楽しむ広介のご満悦っぷりったらない。広介のゲーヂツを「ニセのゲーヂツ」とコキ下ろす者も、劇中に居る事は居た。誰にナニを云われたって構わない。自分の好きな事を追求し、そして自分の理想郷を作り上げたなら、それを見てほしくなるのは自明の理だろう。誰にナニを云われた所で、自分のセンスで完成させた楽園を、最愛のひとにだけは理解してほしいのだ。だから言葉にして伝えるのだ。他者がナニをどう云おうが関係ない。


 


 貴兄の目には今、ナニが映っているだろうか。
 こげーな愚かしいブログからいっぺん目を上げて頂きたい。そしてご自身の本棚をご覧あれ。「本棚を見ればそのひとが分かる」とはよく云ったモノで、そちらにはご自身の趣味で揃えられたご本を陳列なされている事かと存じる。それ等に代表されるセンスで作り上げられた貴兄のお住まいもまた、乱歩の土蔵がそうであった様に、ひとつのパノラマ島=理想郷とは云えまいか。「ユートピヤ」とは「何処にも無い場所」とゆー意味らしい。貴兄のユートピヤはきっと、他の何処にも無い場所だろう。
 かくゆー筆者のパノラマ島は、貴兄が目を通して下さっている愚ブログである。アフィリエイツ契約などしていないから何にも無い何にも無い実入りも何にも無いが、書きモノごっこが楽しいのだ。無い知恵を振りしぼって文章に仕立て上げるのが楽しくって楽しくって仕方が無いのだ。少年の頃から愛してやまない存在である筋少人間椅子、電気。そのラインナップに5年前からBerryzが、さらに今年に入ってからは吉川友も加わった。彼等、彼女等への思いが取っ散らかり、やはり彼等、彼女等の画像がゴロゴロ転がっているこの空間は、実際の住居や職場よりも居心地のいー、まさに筆者の楽園なのである。 ※あるいは「ゴミ屋敷」ともゆー。


 


 


 急に思い出しただ。KARAの「GO GO サマー!」のPVは、浮かれちRAKAしたヴァカンスも、舞い踊る歌姫の姿も“ひるねの夢”でしかなかったってゆードラえもんの幻の最終回ぢみた構成で、確か「パノラマ島奇談」にも“ひるねの夢カラ覚めた様な虚脱感”的な記述があったって記憶してて、したっきゃ「〜サマー」を取り上げた馬鹿記事へ「天国と地獄の美女」ネタさ放り込んだだ。忘れてたなやー。
 広介を襲った虚脱感は、ヤル事をヤッたカラ、または犯罪があばKAREそうになった事カラ来たモノではない。パノラマ島を創ったのは源三郎の名義であり、千代子に愛されたのもやはり源三郎……人見広介なんて人間は、現実世界に存在していないんだ……KAREはそう悟り、夢カラ覚めたのだ、と筆者は捉えている。
 ドリフのもしもコーナーではないが、平成の世に「パノラマ島」が実写化されるとしTARA、イケメン兄ちゃんがウヂャウヂャ出て来たおす「PANORAMA AIRANDO ZA MUUBII」的な、目も当てられない凄絶なレイプ絵巻となること請け合いだろう。そこへ行くと昭和の映画人は恥骨、違う、気骨があった。「パノラマ島」を土台に、他の乱歩作品のいーところ取りをした1作を、監督・石井輝男はヅバリ「江戸川乱歩全集 恐怖○○人間」と名ずけたモノだ。それをブログで扱う側は、思わず自主規制せづにはいられない。
 かの作品が上映されるたび映画館に爆笑の渦を巻き起こすラストシーンは、少々毛色は違うが「天国と地獄の美女」でも再現されていた。悪名たかき人間花火である。


 


 


 さよNARAするのはつらいけど、次の回までごきげんよう(^-^)ノシ あと歯ぁみがけよ。

 この「天国と地獄の美女 江戸がWARAん歩の『パノラマ島奇談』」は、TV番組に関連した書き終え項目です。この記事を加筆、訂正などして下さる協力者を求めていません。