第161話「哀れ橋本くんドン無視」の巻

 屈辱であった。たかだか300余ペーヂの1冊である。それも中身スッカラカンだから、正味は半分程度だろう。300÷2=……えーっと、えーっと……とにかく大した事は無い。そんなモノすら、大造は読み切れる気がしないのだ。
 かつて「ライトノベルの楽しい書き方」とゆー映画が上映された。同級生で云えば女子出席番号03・須藤茉麻をグッと細くした様なその主演女優に気を惹かれた大造は、鑑賞を前に予習のつもりで原作を手に入れた。だが「ラノたの」がかもし出す甘づっぱさは30親父の鼻を痛め付ける程に刺激的で、最後まで読み終えられづ、結局は本棚の肥やしにしてしまったのである。そんな昨春以来の、これは恥辱でしかなかった。


 


 「……いーやいハァ……王様ゲームの敗北者でも、脱落者でも、何でもいーやいハァ……」
 せまいながらも楽しい我が家。部屋の中を見渡せば、彼本来の趣味で集めたモノであふれ返っている。ナニも嫌な思いをしてまで、駄作に目を通す必要もあるまい。命令から丸2日、ペーヂにしてわづか50。かの本を読破する事を大造が断念したその時、彼のケータイは新たなメールの受信を告げた   続く。